機械設計心得ノート、続・機械設計心得ノート

 

 設計図に書かれた線、数値に意味のないものはありません。例えば軸の図面で軸受が入る部分は、メーカー推奨の寸法と加工形状が使われている、といった具合です。しかし、「図面を見ればわかる」と設計を学ぼうとする者を突き放すのはどうでしょうか。確かに、ベテラン設計者の知識、ノウハウを文字として全て書いて伝えるのは不可能なことで、また、文章を書くことが不得手な優秀な設計者もいます 1)。しかし、だからといって何も伝えないのは合理的な対応とはいえません。また、研究開発のために機械装置をつくりたいが、その設計について相談する相手がいないという状況におかれた研究者や技術者もいます。
 「機械設計心得ノート」、「続・機械設計心得ノート」は機械設計に関するノウハウがつまった本です。語学に例えれば、ボルトや軸受に関する製品知識、力学の計算結果などが単語とすれば、これらを意味のある文章とする文法に相当するのが、本書で取り上げる機械設計心得的なもの、そして設計製図はこれを正しく伝えるワープロのような存在と思います。なお、図面に書かれたものを製作するメーカーにとって、図面が全てですので、図面を読んだ人が「?」とならないように出図時のチェックで書き漏らしがないように。(設計者は書いたつもりになっていたが、書かれていないということが時々ありますので。)

 

渡辺秀則:「機械設計心得ノート」
1983、日刊工業新聞社

渡辺秀則:「続・機械設計心得ノート」
1988、日刊工業新聞社

 

1) 人工知能研究としてエキスパートシステムが過大な期待を集めた後、沈静化してしまったのもこの点があったのではと思います。