設計での商報の利用

 

 機械設計でボルトの長さを決める場合、標準品から選定すれば安価にボルトを入手できることからJISで記載された推奨呼び長さから選ぶことになります。これに外れた長さのボルトを用いる場合、少し長い標準品のボルトを入手して加工することになりますが、加工手間を考えるとかなり高額なものとなってしまいます。
 これと同様のことが新たに機械を設計する場合にもあります。ボールねじなどの機構部品の場合はわかりやすいのですが、それ以外に市場には様々な機構部品が機械にそのまま、組み込める形で販売されていることが多くあり、これを利用して設計に組み込めば短期間に費用も抑えて機械を実現できることが少なくありません。このような設計ができるかどうかは、市場に出回っている部品に関する知識の量にかかります。
 機械設計に携わっていたとき、役に立ったのが「商報」でした。これは伝動機器の総合商社の発行する一種のカタログですが、昼休みの時間などにページをめくっては「このようなものもわざわざ設計しなくても標準品として使える」といった知識を仕入れ、自分で図面を書いて製作しなければならない部品点数を減らすのに喜びを感じていたものでした。また、最初、自分で考えた機構のアイディアも、商報やこれに掲載されていない専門メーカーのカタログを見て、「別のアプローチとなるけれどこの機構部品でも同じ機能を実現でき、安価にできる」として白紙にもどしてやりなおしたこともありました。現在はインターネットで商報と同様の情報を入手できることから、わざわざ入手する必要はありませんが、一度、そのホームページでどのような部品があるか、ざっとながめておくことも設計の役にたちます。
 なお、機械設計をする場合、時間の制約、あるいは「隙間を通せばよいだろう」と軽く考えて、機構部の設計に集中してモータへの配線処理がおろそかになってしまうことがあります。カバーなどで配線が隠蔽される構造ならばよいのですが、可動部分がある場合、ケーブルウェイなどの部品が最初から取り付くことを前提に設計の必要があります。美しい製品をつくりあげるために機構部品だけでなく、配線材料などに関する知識も不可欠といえます。

 

高津伝動精機の商報

 

【リンク】

  • MISUMI (FA用メカニカル標準部品、メカニカル加工部品、他)