機械設計を学んだ本

 

 機械工学は基礎の講義を受けた程度、機械設計について専門的に学んだことはありませんでした。そして電気屋の立場から「それは機械屋の仕事」という見方をしていたものでした。しかし、仕事として取り組まねばならなくなりました。
 「機械の要求機能と制約条件の明確化 → それらを実現する機械の基本的なアイディアの検討 → 設計計算 → 機械設計」という一連の流れは理解し、また、これらは一方向に流れるのではなく、途中のステップの内容によっては以前のステップに戻ってやり直しが必要なことは知識としては理解していました。しかし、具体的に自分の手でそれらをこなさなければならないとなって「どこから手をつけたらよいのだ・・・」というのがその時の偽らざる気持ちでした。特に設計計算の部分がそうでした。
 その時に私に光明をもたらしてくれたのが大西清の「電動ウインチの設計製図 - フローチャートによるシステム設計 -」(1986年、理工学社、2,100円(税込))でした。私はソフトウェア開発もしていたことから「書名から電動ウィンチを設計する人のための参考書かもしれないけれど、本文にフローチャートを取り入れて書かれているから、これだったらわかりやすいかな・・・」と本書を入手しました。そして読み進めるうちに、書名は先入観を与えるだけのもので内容は全ての機械の設計に共通し、「このような手順ですすめれば、機械の設計算書や設計図を作成することができる」ということを理解することができました。実際、本書のおかげでいくつもの機械設計を行うことができました。若い同僚に「良い本だから」と手元にある本を渡したり、新たに購入して贈ったりもしました。私の機械設計の原点はこの本にあるといっても過言ではありません。

 大西清著のもう一冊の本、「JISにもとづく機械設計製図便覧」、この本と商報、そして商報に掲載されていない部品の資料を手元に置いて設計製図をしました。なお、この本では対応できない特殊な機械はそれに関わる様々な文献を集めて、設計計算の手順の裏づけをしていましたが、この本だけでかなりの実務に対応できました。この本の編集の確かさのあらわれかもしれません。また、この本は日本の書籍に珍しく定期的な改訂が行われていて、私も版が新しくなる度に購入し、下の写真は仕事で最後に使っていた8版(1993年)。現在は10版(2001年)で価格は3,990円(税込)。非常にコストパフォーマンスが高い本です。

 

大西 清、「JISにもとづく機械設計製図便覧」、理工学社