Olivetti Lettera 32 , Brother EM501

 

 英文タイプライターはその昔、タイピストという職業があったように事務作業に不可欠な道具でした。しかし、PCの普及によってワープロソフトで何度も訂正をしてからプリンターに出力することが一般的にできるようになり、リアルタイムで正確に入力できる能力の必要性は極めて低くなりました。また、リボンを叩いて機械的に印字するという機構も、仕事の方法自体がカーボンコピーをとらないでよいとか、変化してきたため、必要性が薄れてきました。このような変化の中、タイプライターは恐竜のように絶滅していく機械なのかもしれません。1998年のTom HanksとMeg Ryanの共演の映画"You've Got M@il"の中でMeg Ryan扮する主人公の同棲相手のジャーナリストがPCを嫌い、頑なに電動タイプライターを使う姿がでてきましたが、時代の流れなのでしょう・・・。

■ 手動タイプライター

 Olivetti Lettera 32ニューヨーク近代美術館の永久保存に選定された工業デザインの父といわれたMarcello NizzoliのデザインのOlivetti Lettera 22 のデザインを受け継ぐポータブルタイプライターで,1963年に発売され,全世界で最も多く売れたタイプライターといわれます。このタイプライターが欲しく、アルバイトで貯めたお金と不足金額を親に頼み込んで得たものを加えて入手しました。毎日20〜30分、欠かさず1ヶ月ほど練習して、不器用な私ですが、タッチタイピングできるレベルになりました。キーボードに悩まされないで今までこられたのも、この機械のおかげです。

■ 電動タイプライター

 電動タイプライタの歴史を大きく変えたのは1961年に登場したIBM Selectricというタイプライタです。このタイプライタはゴルフボール大の球形のヘッドに活字が刻まれ、このボールを交換することで特殊文字の印字も可能でした。また、使い捨てのリボンで非常に鮮明な文字を印刷することができました。
 1978年に市場に登場したWordstar という英文ワープロソフトがシェアをとりましたが、当時はドットマトリックスプリンタが全盛(インクジェットプリンタもありましたが、現在の印字品質からは想像できないほどの低い印字品質)で、業務で使える印字品質の価格的にも導入が可能であったのはdaisy-wheel printer以外にありませんでした。(ドットマトリックスプリンタで印刷した活字が最先端をいく(?)というのでもてはやされたような逸話も聞いたことがありますが。)
 daisy-wheelは1970年の発明で,IBMのSelectricの機構に比較して構造が単純で安価な印刷機構を実現したことから普及しました。上の写真のBrother EM501 は出力専用(写真のキーボードのでっぱり部分が全くないモデル)のdaisy-wheel printerをtypewriterとしても使えるようにした初期の製品と記憶しています。タイプフェースは写真のdaisy-wheelを交換することで簡単に変えることができます。PC-9801にRS-232Cケーブルを介して接続してWordstar で文章を作成し、このプリンターで印刷、そして封筒への宛名書きのためにタイプライターとして使う、というのが通常の使い方でした。なお、現在の後継機種にはPCに接続可能なモデルはなくなっています。

 

【参考】
 タイプライターの歴史: 
http://home.earthlink.net/~dcrehr/