TS-613KOWA

 

導入の経緯

 知人のバードウォッチングの影響を受けて入手した双眼鏡、私自身はバードウォッチングに深入りすることはなく、もっぱら遠方の観望や簡易な月観察用に使っていました。スポッティングスコープはその高倍率から三脚の使用が不可欠で、「重い思いをしてまで使いたくない」と考えていました。
 ある日、大町自然公園(市川市)へ散策にでかけ、カワセミが池にいるのを見てデジカメ(CoolPix 4500)で撮影したのですが、当然、点のようにしか撮れません。「大きく撮りたい」という願望が高まり、Web検索でスポッティングスコープとデジタルカメラを組み合わせた撮影方法 『デジスコ』の存在を知り、Webサイトの情報(【リンク】参照)を頼りに機材を 購入し、デジカメの部分は変遷していますが、現在も月の撮影などを楽しんでいます。


TS-613(KOWA)とCoolPix 4300


TS-613(KOWA)+CoolPix 4300にて


TS-613(KOWA)+CoolPix 4500


TS-613(KOWA)+CoolPix 4500にて


TS-613(KOWA)+FinePix F11


TS-613(KOWA)+FinePix F31fd

 

機材の選定

■ スポッティングスコープ

 CoolPix 950用にテレスコマイクロ8x20Dを入手して月撮影を行ったところ、色収差が気になり、光学性能のよいEDレンズを使った機材 であることは必須条件で、デジスコとしては直感的に対象にレンズを向けられる直視型のスコープがよいのですが、月撮影も行うために傾斜型とし 、この条件に合致する生産完了で比較的安価であった口径60mmのKOWA TS-613を入手 しました。

■ デジタルカメラとアイピース

 スコープのアイピースはデジタルカメラとの相性があります。私の機材の変遷からこれを紹介します。

表1 アイピースとデジカメの相性

  TSE-21WB(20倍) TSE-21WD(20倍) TSE-14W(30倍)
CoolPix 4500

(写真例参照)

ワイド側でケラレがあるため、ズームのテレ側での撮影に限定される。 ワイド端7.85mmでわずかに周辺減光があり、ズームとともに周辺減光が増加の後に減少し、18.7mmからテレ端32mmまでは周辺減光なし。 ワイド側でケラレあり。
CoolPix 4300 ズーム全域でケラレなし。ただし、AFの信頼性が低い。 --- ズーム全域でケラレなし。ただし、AFの信頼性が低い。
FinePix F11 --- 全域でケラレなし。* ワイド側でケラレあり。
FinePix F31fd --- 全域でケラレなし。但し、ワイド端で絞り値によって周辺減光が見られる場合もある。 ワイド側でケラレあり。

*: F11とF31fdとは同じ光学系のため、同じ撮影条件であれば周辺減光の発生が想定される。


TSE-21WB


TSE-21WD

CoolPix 4500とアイピースの相性

 TSE-21WB(20倍)は、手持ちのCoolPix 4500と相性がよいとされることから選びました。しかし、上記のようにワイド側で周辺減光とケラレがあり、 ケラレのないテレ側ではF値が高くなってしまい、薄暗くなるとの鳥の撮影は難しいものになりました。の撮影はこれらを気にすることなく使えました。
 CoolPix 4300はワイド域でのケラレがなく、デジスコ向きとされましたが、価格がこなれてきた時に入手しました。そして 「大きく撮りたい」という願望からTSE-14W(30倍)も入手しました。しかし、CoolPix 4300はAFの動作の信頼性が低く(Nikonもデジスコでの使用は想定外でしょうが)、オート撮影を主にしたモード設定 は撮影する上で使い勝手が悪く、不満でした。

 2004年4月に登場のKOWAの新しいアイピースTSE-21WD(20倍)はCoolPix 4500との組合せで「ケラレが大幅に軽減されます」とされ、「月撮影専用となっていたCoolPix 4500で全ての撮影に対応できたら・・・」と入手しました。TS-613 + TSE-21WD + TSN-DA1 + 28mmアダプターリング + CoolPix 4500(f=7.85 〜32mm)の組合せではワイド端の7.85mmで右 下の写真のようにわずかに周辺減光があり、ズームするに従って周辺減光が増加の後、減少し始め、わずかに周辺減光が残るのが17.3mm。18.7mmからテレ端の32mmまでは周辺減光は認められませんでした。画質は別として35mm換算、760mmと1800〜3100mmの 2本のレンズを使うような感じでCoolPix 4300のように全域ケラレなしとはいきませんでした。しかし、トリミングなどを考慮すれば使える範囲は広くなりました。

 現在のデジスコ対応のデジタルカメラはFinePix F11FinePix F31fd。TSE-21WDとの組み合わせで720〜2160mmのズーム 範囲のうち、ワイド側で対象と絞りによって若干の周辺減光が発生する場合がありますが、ケラレはなく、AF動作もより確実で、撮影モードもマニュアル操作に対応で使い勝手がよくなりました。

■ 接続アダプター

 スコープとカメラの接続はメーカー純正品のTSN DA-1(KOWA)に、CoolPix 4300用としてアダプターリングN4300、CoolPix 4500用としてアダプターリング(φ28mm)を組み合わせ、FinePix F11、FinePix F31fdはコンバージョンレンズ用のアダプタの関係でアダプターリング(φ28mm)を共用しています。

■ レリーズ

 デジスコは超望遠撮影ですので、スコープのちょっとした振動も画像のブレの原因となります。 そこでCoolPix用にシャッターのレリーズ機能、ズームの調整、インターバル撮影機能 のあるリモコンMC-EU1 (Nikon)を入手したのですが、CoolPix 4500と組み合わせると動作が不安定となり、実用になりません。 「何という製品を売っているんだ、Nikonは!」という気分でした。
 下記のサイトで機械式レリーズの取り付け方法が紹介されていますが、タイマー撮影で対応している状態です。

■ 三脚・雲台

 スコープのブレ防止には三脚と雲台も重要です。手持のカメラ用三脚PX-701Fを有効活用しようとビデオ用雲台PH-368 (Velbon)を入手したのですが、思うような操作感が得られません。そこで色々物色してビデオ雲台700RC2とビデオ三脚756B(Manfrotto)の組み合わせでほぼ、満足できる状態となりました。なお、後に気付いたことなのですが、合成樹脂製の雲台(PH-368も該当)は剛性が低く、選ぶべきではありませんでした。合金製の雲台を選んでいれば異なった結果となっていたかもわかりません。

■ スコープ用ケース、カメラ用ケース

 器材の持ち運びにはケースが不可欠です。デイパック型カメラ用ケース(望遠レンズ対応)にスコープやカメラ類一式を収めるのが取り出しやすさも含めて最もスマートな方法と思います。それに三脚取り付け部があればいうことがありません。私は撮影スタイルが決まっていないこともあり、スコープ用ケース、カメラ用ケースに入れ、それらのケースごとデイパックに入れています。
 スコープ用ケースにはスコープ収納のまま、三脚へ取り付けて観察可能なTSN-600シリーズ用ケースC-601を使っています。メーカーへの問い合わせに対して「TS613を収納できるけれど収納状態で三脚への取り付けが・・・」という返事だったのですが、入手して試したらスコープの三脚取り付け部の凸にひっかかるようにケースを少し引っ張ると何の加工もしないで 上の写真のように使用できることが確認できました。

■ 液晶モニターフード

 液晶モニターフード(TID-2、ニコン技術工房)はCoolPix 4300、4500の液晶を屋外で見たり、ピントを確認するのに役に立ちました。液晶モニターフードは液晶モニタフードシュー(2S1)を別に買い求め、 2つのカメラで共用していました。

 

ビデスコ
  スポッティングスコープにビデオカメラを接続したシステムを「ビデスコ」と呼ぶそうです。
 SONYから高倍率テレコンバージョンレンズキットVCL-FS2Kという製品がビデオアクセサリーとして発売されています。製品の構成を見るとスポッティングスコープ(10倍)をビデオカメラに接続できるようにしたもの。そこで 実験としてスコープTS-613にビデオカメラDCR-PC10 (SONY、f=4.4〜52.8(35ミリ換算値f=42〜504))を接続してみました。

■ 接続の方法

 TS-613への接続はデジタルカメラ用の接続アダプターTSN-DA1にビデオカメラDCR-PC10 を接続するための37mmのリングを組合せるだけ。物理的には簡単に接続できました。なお、写真のようにア イピース側に重量がかかることから本式に使う場合にはブラケットを製作してスコープにビデオカメラの荷重がかからないようにする必要はあります。

表1 アイピース

アイピース 見え方
TSE-21WB  ケラレのない画像が得られるのはテレ端のみで、DCR-PC10のテレ端は35mmフィルム換算504mmであることから、20倍の接眼レンズと組合せで10,000mmという超望遠 となります。日中、数百メートル先を見ると大気のゆらぎの影響がもろに出て、ちょっとした風も振動として現れることから使える場面は 極、限られます。上記のキットが「テレ端のみ使用可能 」として倍率を10倍に設定しているのは実用性から設定された数値であることがわかりました。また、KOWAからTSN-VA1というビデオカメラとの組合せ用の8倍のアイピース一体型アダプタが2004年3月に発売されていますが、この倍率も同様の観点から 設定されたものと考えられます。
TSE-21WD  TSE-21WBよりケラレの少ないTSE-21WDでは、ワイド端でケラレ、周辺減光なく使用できました。 しかし、スコープとの組合せで35mm換算で840mmとなり、数値的に見れば1.7倍のテレコンを使ったのと同じ数値です ので、機動性を考えると敢えて使う意味は見えてきません。
 ズームするとすぐに周辺減光、ケラレが発生し、これがなくなるのがおよそ40mm位(テレ端と周辺減光がなくなるレンズ繰り出し位置での液晶モニタ上の対象物のサイズを測定して概算)からで、それ以降テレ端まで使うことができます。35mm換算で7,600〜10,080mmくらいとなります。TSE-21WBよりは使える場面が でてきそうです。

 ビデオカメラによる超望遠撮影を定点観測に利用する場合は、下記の3点の対応がまず、必要となります。しかし、パンやチルトなどのビデオカメラの操作が入ってくる場合は、大型の三脚と電動雲台を組み合わせてスコープのフォーカスも電動化してリモコン操作可能にするなど、かなり、大掛かりな装備が必要になります。

  1. スコープとカメラを一体化するブラケットを製作してカメラ自体が振動して撮影画像に影響がでないようにすること
  2. 剛性の高い大型の三脚を使用して風などの影響も低減すること
  3. カメラのズームやON-OFFの操作はリモコンを使ってカメラや三脚に一切、触れないようにすること

 動画撮影可能なFinePix F11をデジスコ対応にしましたので、撮影中のズーム操作はできませんが、35mmフィルム換算720〜2,160mmの範囲で超望遠の撮影ができます。 そこで「ビデスコ化に労力をかけるのは・・」になりました。

 

【リンク】